1話完結
一目惚れ (巨人♀、人間♂)
「ごめんねぇ……大丈夫~?」
目の前にいきなり降ってきた間抜けなヘラヘラとした顔が、顔を砂汚れで汚しながら自分の安否を聞いてきた瞬間に。
俺はその顔の額を指差して。
「……血、出てるけど……」
そんな一般的な反応しか返せていなかった。
けれどもそのヘラヘラとしたかわいらしい顔はそのままに、かなたから伸びてきた巨大な手でその額をなぞってまたヘラリと笑う。
「あ~。ほんとだねぇ。心配してくれてありがとぉ」
君は優しいねぇ、とのほほんと言われて、俺は返す言葉をなくしてしまっていたのだった……
「涼くん涼くん」
「何だよ優菜」
「えへへ~、呼んでみただけぇ」
50mはあろう巨大な女子が、建物の屋上に立ってフェンスに寄りかかる俺に、座った状態で言葉を投げてくる。
この建物の向こうは場所こそ違えど、俺とコイツがであったあの巨人専用道路だ。
もう数十年以上前に地球にやってきた人間にそっくりな生命体で、友好的なことから共存を始めていた。
しかし、問題になったのはその彼らの大きさ。建物よりも高く強靭なその身体は悪気なく周りの建物を破壊する。
よって、道路を挟んでの共存。決して両方が毛嫌いしていたりとかしているわけではない。
実際俺とコイツが顔を合わせるのはもう十回以上にはなる。
初めて人間の街側に頭を向けて盛大にずっこけた優菜とそれを見た俺。
目の前の優菜よりもデカイ兄がコイツを起こしに来たときは本気で潰されるんじゃなかろうかと不安に思ったほどだ。
ものすごく鋭い目つきで見下ろされてたのを思い出してブルリと思わず身震いしてしまう。
「涼くんどしたのぉ?寒いの?」
「なんでもないなんでもない。で、お前なんでまた俺呼んだんだよ」
「涼くんに会いたかったからぁ!」
「顔近い!近いから!!」
「え~……」
きょとんと見下ろしてくる優菜に俺が手を振り、用件を問えば輝かんばかりの笑顔で顔を寄せてくる優菜の鼻に両手を当てて押し返す。
しょんぼりとする目元。本当にがっかりしたように声を上げる口から漏れた甘い吐息が俺の周りを包んで。
しかしすぐにその目元はまた笑みの形に緩められ、顔を離していく。
「じゃぁ、じゃぁ涼くん!」
「はいはい何かな優菜くん」
返事をすればうれしそうに笑って、体育座りで座っていた優菜は身体を動かして膝立ちで俺を見下ろして。
「また抱っこしていい?涼くんを手に包んで、ぎゅーってしていい?」
「あのな。俺は動物じゃないんだぞ?」
「だってカワイイんだもん!小さいから!」
「お前らから見りゃ人間はみんな小さいだろうが!
あれか?お前から見たらデブなオヤジだとかキモイ奴とかもカワイイわけか!?」
俺の反論に答えることもせず、えへへと笑う優菜はそのまま顔を再び寄せて。
「涼くん、おねがいぃ」
両手を合わせてねだってくる少女の姿は、大きさが違ってもかわいく見えてしまうもので。
深く、本当に深く息を吐き出して俺は大の字に屋上に寝そべった。
「もー好きにしろっての」
「やったぁ!涼くん優しいからだぁい好き!!」
「お前それ兄貴の前で言うなよ……?」
「なんでぇ?」
「俺、確実にプチッとやられる気がする。こう、プチッと」
「しないよぉ!殺人なんてぇ……
お兄ちゃん、目つき怖いけどやさしいんだよぉ?」
今度ちゃんと紹介してあげる!と明るく言ってくる優菜に、あぁそうですか。と顔を背けて返し。
その後すぐに周りに影ができて肌色の壁が目の前にやって来れば、身体を緩やかに支えて持ち上げる。
生ぬるく柔らかい床とも取れる手の平に寝転がされた俺を見下ろして、夕菜は笑ったままで。
「えへへ、やっぱり涼くんちっちゃいねぇ」
「そりゃ人間ですから」
「でもね、ホントに私ね、涼くん好きなんだよ?本当だよ?」
「あー、はいはい」
「涼くん、ねぇ涼くん」
「ん~?」
反対から手を伸ばされて、人差し指が迫ってくると俺の頭を柔らかく擦る様に撫でて。
笑顔をへらへらとしたものからにっこりとした物に変えて……というより、雰囲気が微妙に変わったと言ったほうがいいのかもしれないが、とにかくそんな感じの顔で俺を見下ろし、顔を寄せる。
「……涼くんは、私のこと好きかな?嫌いかなぁ?」
「聞いてておかしいと思いませんか?」
「あう」
あきれた顔で問いかけに問いを返してやれば、困ったように少し顔をうつむかせる。
それでもなお、顔ははっきりと見えるのだが。
「……嫌いならこんな風にさせてねぇっつの。いい加減分かれ」
「……ん。やっぱり涼くん大好きぃ!」
しょんぼりとする顔を見かねてフイッと顔をそらし言い放つ。
そんな俺の言葉に何を思ったのか知らないが、コイツはとりあえずうなずいて。
ギュムッ、と俺を胸に押し付ける。
「おま!手だけ!手だけって言ってるだろ分かれよ!!」
「こっちがいーの!ギューっ」
「ガキかお前は!!」
ブラウスを押し上げる豊満な胸に押し付けられる俺の反論に子供のように反論する優菜。
顔を赤くした俺が引き抜いた手で巨大な優菜の手を剥がそうとする最中に声を上げて見上げて。
頬を染めた優菜の視線と視線がかち合って。
優菜は優しい笑顔で口を開いた。
「一緒にいられるなら、ガキでいいもん」
その表情とソノ言葉は。
「反則だろ……」
「ん~?涼くん?」
「好きにしろって言ったんだよ!!」
「えへへ……ありがとぉ」
キュッと身体がさらに胸に沈みこむ。
圧迫感はないといえばウソになるが。
死ぬほどではない。
とりあえず顔を優菜からはずして、高い位置から見える町並みに俺は視線を戻していた。
さらに赤くなった顔を隠すためだけに。
目の前にいきなり降ってきた間抜けなヘラヘラとした顔が、顔を砂汚れで汚しながら自分の安否を聞いてきた瞬間に。
俺はその顔の額を指差して。
「……血、出てるけど……」
そんな一般的な反応しか返せていなかった。
けれどもそのヘラヘラとしたかわいらしい顔はそのままに、かなたから伸びてきた巨大な手でその額をなぞってまたヘラリと笑う。
「あ~。ほんとだねぇ。心配してくれてありがとぉ」
君は優しいねぇ、とのほほんと言われて、俺は返す言葉をなくしてしまっていたのだった……
「涼くん涼くん」
「何だよ優菜」
「えへへ~、呼んでみただけぇ」
50mはあろう巨大な女子が、建物の屋上に立ってフェンスに寄りかかる俺に、座った状態で言葉を投げてくる。
この建物の向こうは場所こそ違えど、俺とコイツがであったあの巨人専用道路だ。
もう数十年以上前に地球にやってきた人間にそっくりな生命体で、友好的なことから共存を始めていた。
しかし、問題になったのはその彼らの大きさ。建物よりも高く強靭なその身体は悪気なく周りの建物を破壊する。
よって、道路を挟んでの共存。決して両方が毛嫌いしていたりとかしているわけではない。
実際俺とコイツが顔を合わせるのはもう十回以上にはなる。
初めて人間の街側に頭を向けて盛大にずっこけた優菜とそれを見た俺。
目の前の優菜よりもデカイ兄がコイツを起こしに来たときは本気で潰されるんじゃなかろうかと不安に思ったほどだ。
ものすごく鋭い目つきで見下ろされてたのを思い出してブルリと思わず身震いしてしまう。
「涼くんどしたのぉ?寒いの?」
「なんでもないなんでもない。で、お前なんでまた俺呼んだんだよ」
「涼くんに会いたかったからぁ!」
「顔近い!近いから!!」
「え~……」
きょとんと見下ろしてくる優菜に俺が手を振り、用件を問えば輝かんばかりの笑顔で顔を寄せてくる優菜の鼻に両手を当てて押し返す。
しょんぼりとする目元。本当にがっかりしたように声を上げる口から漏れた甘い吐息が俺の周りを包んで。
しかしすぐにその目元はまた笑みの形に緩められ、顔を離していく。
「じゃぁ、じゃぁ涼くん!」
「はいはい何かな優菜くん」
返事をすればうれしそうに笑って、体育座りで座っていた優菜は身体を動かして膝立ちで俺を見下ろして。
「また抱っこしていい?涼くんを手に包んで、ぎゅーってしていい?」
「あのな。俺は動物じゃないんだぞ?」
「だってカワイイんだもん!小さいから!」
「お前らから見りゃ人間はみんな小さいだろうが!
あれか?お前から見たらデブなオヤジだとかキモイ奴とかもカワイイわけか!?」
俺の反論に答えることもせず、えへへと笑う優菜はそのまま顔を再び寄せて。
「涼くん、おねがいぃ」
両手を合わせてねだってくる少女の姿は、大きさが違ってもかわいく見えてしまうもので。
深く、本当に深く息を吐き出して俺は大の字に屋上に寝そべった。
「もー好きにしろっての」
「やったぁ!涼くん優しいからだぁい好き!!」
「お前それ兄貴の前で言うなよ……?」
「なんでぇ?」
「俺、確実にプチッとやられる気がする。こう、プチッと」
「しないよぉ!殺人なんてぇ……
お兄ちゃん、目つき怖いけどやさしいんだよぉ?」
今度ちゃんと紹介してあげる!と明るく言ってくる優菜に、あぁそうですか。と顔を背けて返し。
その後すぐに周りに影ができて肌色の壁が目の前にやって来れば、身体を緩やかに支えて持ち上げる。
生ぬるく柔らかい床とも取れる手の平に寝転がされた俺を見下ろして、夕菜は笑ったままで。
「えへへ、やっぱり涼くんちっちゃいねぇ」
「そりゃ人間ですから」
「でもね、ホントに私ね、涼くん好きなんだよ?本当だよ?」
「あー、はいはい」
「涼くん、ねぇ涼くん」
「ん~?」
反対から手を伸ばされて、人差し指が迫ってくると俺の頭を柔らかく擦る様に撫でて。
笑顔をへらへらとしたものからにっこりとした物に変えて……というより、雰囲気が微妙に変わったと言ったほうがいいのかもしれないが、とにかくそんな感じの顔で俺を見下ろし、顔を寄せる。
「……涼くんは、私のこと好きかな?嫌いかなぁ?」
「聞いてておかしいと思いませんか?」
「あう」
あきれた顔で問いかけに問いを返してやれば、困ったように少し顔をうつむかせる。
それでもなお、顔ははっきりと見えるのだが。
「……嫌いならこんな風にさせてねぇっつの。いい加減分かれ」
「……ん。やっぱり涼くん大好きぃ!」
しょんぼりとする顔を見かねてフイッと顔をそらし言い放つ。
そんな俺の言葉に何を思ったのか知らないが、コイツはとりあえずうなずいて。
ギュムッ、と俺を胸に押し付ける。
「おま!手だけ!手だけって言ってるだろ分かれよ!!」
「こっちがいーの!ギューっ」
「ガキかお前は!!」
ブラウスを押し上げる豊満な胸に押し付けられる俺の反論に子供のように反論する優菜。
顔を赤くした俺が引き抜いた手で巨大な優菜の手を剥がそうとする最中に声を上げて見上げて。
頬を染めた優菜の視線と視線がかち合って。
優菜は優しい笑顔で口を開いた。
「一緒にいられるなら、ガキでいいもん」
その表情とソノ言葉は。
「反則だろ……」
「ん~?涼くん?」
「好きにしろって言ったんだよ!!」
「えへへ……ありがとぉ」
キュッと身体がさらに胸に沈みこむ。
圧迫感はないといえばウソになるが。
死ぬほどではない。
とりあえず顔を優菜からはずして、高い位置から見える町並みに俺は視線を戻していた。
さらに赤くなった顔を隠すためだけに。
- 関連記事
-
- まるで少女マンガのような(巨人♂、人間♀)
- 一目惚れ (巨人♀、人間♂)
- 馴れ初めは(巨人♂、人間♀)
スポンサーサイト
NoTitle
一話完結にするにはちょっと惜しい気もします。