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 ←会話風景(イメージ) →ある魔物と異邦人の話(巨♂♀、小♀)
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1話完結

ここから…(巨♂・小♀/姉弟)

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「こ、こないで……!こないでよぉ!!」

「懲りないなお前……」

必死な声と、何処か呆れたような声。

薄暗い月明かりだけが部屋を照らし、その部屋に大小の影を作り出す。
巨大な影と、矮小な影。

巨大な少年が自分の足元。
半歩にも満たない距離で尻餅をついて喚いている小さな少女を眺めて。
また立ち上がり逃げようとする姿を眺めては、嘆息する。

「何時まで続けるんだ?どうせ出られないし外が危険なのは知っているだろ?」

小さい相手が逃げ込める隙間などはすでに対策済みで。
台などの下にはもぐりこめないようにしてあるし、壁に面してある棚の壁との隙間は彼の腕が入るくらいのスペースはしっかりと開けている。

「大人しくもどれよ」

少年の声に、少女は一度少年を振り返るが、それでも逃げ続ける。
少年はちょろちょろと動き回る少女を眼で追って、ゆっくりと足を動かし始めた。
必死になる小さい姿は彼の目から逃れることはできず。
やがて、部屋の隅のほうへと追い詰められて。



「ほらな?今日もこんなオチだ」



目の前に少年がしゃがみこんで言葉を投げる。

「ヤダ……」
「ヤダじゃない」

「イヤ……!返してよ……!家に帰してよ!!」

「……何度言ったら、分かってくれるんだよ?」

少年が手を床について、少女の傍に顔を寄せる。
少女は恐怖に染まる顔で、瞳で、それを涙を流しつつ見上げていた。










「ここがお前の家なんだ。翠(すい)」










「嘘つかないで!私の家、こんなに大きくない!!」
「翠。いい加減分かってくれよ。頼むから」

「この化け物!魁(かい)に化けたって私は信じたりしない!信じたりしないッ!!」

「翠」

「呼ばないで、来ないで!!」

見下ろしている中、少女……翠が走ってまた別の場所へと逃げていく。
少年はそれをみて、身体を起こしてその場に胡坐をかいて。
天井を仰ぎ見て息を吐き出した。


「……化け物、ね……酷くねぇ?……姉ちゃん。
 オレ、本物の……弟の、魁なのに」


少年……魁の独り言のような声など翠には届かない。
ただ、逃げるのに必死だった。

その姿を横目で捉えて、魁はまた立ち上がる。

足をまた、今度は普通の歩みでズンズンと翠のほうへと向けて近寄り。
翠の前に足を勢いよく踏み降ろす。

「キャァッ!!」

小さい悲鳴。もう何週間もコレを続けてる。慣れていたために翠に怪我をさせていないことも分かっていた。




双子だから、きっと普通の家族や兄弟より分かるのだと、彼は自負していた。



二人は双子だった。
ただ、姉が……翠が縮小病という奇病に掛かって人形のように小さくなってしまっただけ。
そして、翠はそれをいまだに受け入れられていないのだ。

ゆっくりと視界を下に向けて。

怯えて震える翠を見て、魁は悲しい顔で笑った。
「……もう、コワイのイヤだろ?
 部屋に戻ろう。遅いんだ。寝ないと持たないしさ……来いよ」
「さ、触んないで……!イヤ!イヤァッ!!」

「翠……姉ちゃん」

「呼ばないで!降ろして!離してよぉ!!」

身体をかがめ、後ろへと下がろうとしていた小さい身体を両手でできるだけ優しく包み持ち上げる。

「……暴れないでくれよ。くすぐったいだけだって……いつも言ってるだろ?」

手の中でじたばたと暴れる翠に呟いて、中で噛まれようが引っかかれようが蹴られようが、彼は歩いて。
今の翠の部屋となっている、ドールハウス。
天井が取れる箱型のワンルームタイプのもの。
病気が発祥し、診断されてから魁が購入したものだが、こまごまとした小物まで全てそろえてあつらえた。
今その中は、とんでもない荒れ放題になっているのだが。
そのくたびれたベッドの上に手の中の翠をおろして、また逃げ出そうとするのを壁から片手で剥がしつつ天井を閉じた。
魁が翠が逃げるようになってからつけた掛け金を嵌め込み、天井や壁を叩く小さい音が響く。
プラスチックの窓ももはや傷だらけだった。割れはしていないが。

「翠……ごめんな?でも、閉じ込めないとお前逃げるだろ?
 ……朝起きて、気づかないうちにお前踏んづけたりしたりしたくないんだ……」

よくテレビで流れる。
縮小病の患者が家族や知人に知らぬ間に殺されていたり、ペットに食い殺されたりしているという内容が。
恐ろしくて仕方なかった。
それは両親も同じで、部屋から……魁の部屋からできるだけ出さないように、というように決めていた。

ベッドにもぐりこみ、魁はドールハウスの中で物が投げられ叩きつけられる音を聞いて。
瞳を閉じた。
早く、翠と笑い会える日がまた来ればいいと。




















眠りから意識がじわじわと浮上する。

それを感じつつ魁は自分の顔に違和感を感じて其処に無意識に手を伸ばして。

チクリとした痛みに、意識を覚醒させる。
目を見開いて視界に入ったものは三つ。

自分の手。人差し指に血の玉がぷっくりと浮かんでいる。
もう一つは楊枝ほどの大きさの、切っ先に赤い血がつく剣。
最後にそれを握っている、自分の双子の姉の……翠の顔が、異常に近くにあった。

「……翠……?」

「……ッ……!!」

ぼんやりと名前を呼び、それに反応した翠が剣を自分の目に向けて。
瞬間的に目を貫かれると理解した魁は咄嗟にその小さい身体を小手先で払いのけてしまっていた。

まるで羽虫を落とすように。

跳ね除けると同時に響いた翠の悲鳴にしばし呆然と天井を見て、ハッとして翠を弾いてしまった方を見ながら飛び起きた。
ベッドの上でうずくまる小さい姿を見つけ、そばに手を置いて見下ろす。
特に外傷はないように見えた。

「ご、ごめん!翠……でもなんで?あんなことされたら誰だって跳ね除けるよ?!」

転がっていた剣……ドールハウスに彼自身が飾った飾りものを摘んで、ベッドサイドへと置いた。
翠はフラフラと上体を起こして、その場に座り込む。

「……翠……」
「――怒りで」
「え?」

「目をえぐれば、怒ったあんたが殺してくれるって……思ったからよ……」

初めて返されるまともな言葉。
ゆっくりと顔を上げた小さなその表情は、いつもと同じように泣いていたものの、恐怖や怯えはない。

悔し泣きとか、そういう類のそれ。

「翠」

「分かってた……わかってたけど、受け入れれなかった……!
 なんで、何で私なのよ……!なんで私なの……!?
 こんな姿でどうやってこれから生きていくの……!?
 人にすがりつく、寄生虫のような生き方しか出来ないなら……もういっそ、殺して欲しい……!」

病気にかかる前の翠とは大違いな発言。
前向きなのが、翠だったはずなのに。

病気とは、大きさとは、こんなにも人を変える。

「オレは何をされても。翠は殺さない……絶対に、殺さない……殺せない」
「なんでよ……双子なら、私の気持ち、分かりなさいよ……!」
「イヤだ……翠……死んでほしくなんてない……双子なんだ。当たり前だろ?」
「どうせいつかきっと私がストレスになるわ!!」
「ならないよ……!」

「きっと、きっとなる!だってノイローゼになってる人だって大勢いる病気じゃない!!」
「だから――……ッ、オレは、ならないんだよ!!!」

「ッ!!」

バスッと思わず魁がベッドを叩き、その所為で揺れたベッドと起こった風に翠が顔を覆い倒れる。
それに魁はまた息を呑んだ。

「ごめん翠……!大丈夫?!」
「ホラ見なさい……コレが酷くなればあんたも精神疾患患っちゃうわよ!!」

「そういう反論ばかりするから思わずカッとしちゃっただけだっつの!!
 翠……頼むから。頼むから、殺してとか言わないでくれよ……
 オレ……お前殺したくないし、殺せないし……!
 また、二人でいろんなことやって楽しみたいし!」

魁の発言に翠が泣き腫らした顔で魁を見上げ、魁は悲しそうに翠を見下ろす。
ゆっくりと、ゆっくりと。
魁の手が翠の両側に添えられる。

「翠……がんばって生きよう?病気、いつか絶対治るから」
「……寄生虫なんて、情けないマネ……したくないのよ」
「……うん。翠はオレと違って強いもんな」
「……でも、この姿じゃ何も出来やしないわ」
「たまには、弟のオレにも甘えてよ……
 あの部屋だってオレ、翠のためにあつらえたんだから……グッチャグチャになっちゃったみたいだけど」

ドールハウスを見つめて、プラスチックのガラスが割れているのを見つめる。
掃除が大変そうだと考えながら、魁は手に小さいポツンとした感触が生まれたのに気づいて視線を戻す。
翠が魁の手を触って、なんともいえない顔をしていた。

「双子でも私のほうがチョットだけデカかったのに」
「あれ?違うよ。オレの方だよ」
「はぁ?あんた目腐ってたんじゃないの?私よ。わ・た・し!!」
「翠こそおかしかったんじゃないの?オレだよ。オ・レ!」

くだらない言い争いをして、そっと手で包んで翠を持ち上げる。
翠は暴れることも喚くこともせず、泣き腫らした目で真剣に魁を見つめていた。

「翠」
「魁」
「オレたちってさ」
「どうしようもないくらい」

「「お互いが大事なんだね」」

言い合って、言い終わると同時にどちらともつかず笑い出す。
魁は翠を手に乗せたまま横たわり、ベッドに翠を降ろすと息をついた。

「あー、久しぶりに翠と話せた。オレメチャクチャ嬉しい」

「あらそう?光栄ね」
「そこー、自惚れるなよ?」
「ハイハイ、と。
 アンタはそのままジッとしてなさい」
「え?何する気?」

「ちょっと巨人の身体探検を」

「えぇ?!ちょ、普通一緒に寝転がってもうちょっと談笑しない!!?
 ――あぁッ!!?もう、ちょ、くすぐった……!服ん中入んないでくれよ!!」


元に戻ると同時に唯我独尊に振舞う双子の彼女によかったと思う反面。
服の中にもぐりこまれてしまえばどう反応するべきか。
腋をくすぐられるように移動され、わき腹をもぞもぞと這われる感触に震えるが、どうすることも出来ない。

『おー、おへそって意外と深いのね。私の手くらいなら入りそう……』

「ッ!!翠、やめ……!」

『あらあら。そういえばアンタくすぐられるの苦手だったもんねぇ?退屈しなさそ』

「翠、早く出て……!お願いだから……!」

語尾に音符がつきそうな勢いで言われた元気一杯の小さい姉の言葉に、魁は懇願し続けて。
ようやく出てもらえたのは、翠が上半身をくまなく這いずり回りからかってからだったのは言うまでもない。
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~ Comment ~

NoTitle

今回はシビアな話でしたね。
不注意で縮小病の人を殺してしまったり、その介護でノイローゼになったり…そんな世界だと、縮小病に疾患した人の不安はかなりのものでしょうね。
しかし現実を受け入れられず錯乱するも、ひとたび現実を受け入れれば今度は弟を翻弄する姉が素敵ですねw
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