1話完結
Later -遅い恋心- (巨♂♀・小♀)
まるで少女マンガのような と Wデート? の間の話になります。
男の巨人が多数出ます。苦手な方はお気をつけ下さい。
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大学の構内。
巨人側通路傍で、小さい人間の小夜が高層建築物のように大きい巨人たちの顔を一人一人見て、見知った顔を見つけて笑みを浮かべる。
「瑠維さん!瑠維さ~ん!!」
巨人からすれば足元から聞こえた声に大半が下を向き、関係ない巨人たちは珍しいものを見たというような顔でその場を歩き去り。
名を呼ばれた巨人の瑠維は少しぽかんとした顔でその小さい小夜を見下ろしていた。
「……お前。今日、稽古は?」
「つまらないので抜け出してきちゃいました!」
「おいおい、このお嬢様は……見た目や物腰に反して、結構破天荒だな?……ますます気に入った。ホラ」
教材を片手で抱えなおし、空いた手を床につけて小夜がその手に靴を脱いで乗り上げると、そっとその手を持ち上げて移動を開始する。
移動の最中に手を動かし、左側の胸ポケットに小夜を滑り落とす。
「プハッ……ぬくぬくです」
「後で迎えをちゃんと呼ぶんだな」
「怒られちゃいます」
「一緒に謝ってやるから」
「ありがとうございます」
瑠維は胸ポケットをポフポフと指先で叩いて、小夜は腹部に当たる感触に笑みを浮かべて。
普通の会話をする。
その日は一日、瑠維は小夜と共にずっと過ごしていた。
友人にも小夜を紹介し、講義も共に受けていた。
そして昼。
友人……もちろん男ばかりだが……数名と小夜。
そんなメンバーで昼食を取っていた。
「にしても近くで見ても人間ってちっさいなぁ!」
「荒漉って身長何センチ?」
「152です」
「チッサ!めっさチッサ!!」
「俺の友達の人間は180あるぜ。男だけど!」
「それでも俺たちから見たらチビだろう。この阿呆」
「うわきた瑠維の毒舌!」
「小夜ちゃんよくこんな俺様と仲良くなったね~。なになに?もしかしてコイツがストーカーっちゃってる!?」
「ほぉわかったぞクルス。お前そんなに俺にぶん殴られたかったか。よし立て顔面にストレートにグーで行ってやる」
「カンベン!!」
にぎやかな昼食。男の中に一人だけ人間であれど女がいるのはいいスパイスらしい。会話は堪えなかった。
瑠維の購入した昼食のトレイの淵に腰掛け、少しばかり分けてもらった肉や野菜を同じように分けてもらったパンに挟んでバケットサンドのようにして食べていた。
瑠維が立ち上がり、ギリギリと瑠維よりも少し背の高い隣に座っていたクルスの首を後ろから腕でホールドして締め上げ、それをやんややんやとはやし立てるほかの面子。
「お前そんな調子で小夜ちゃん痛めつけんじゃねぇぞ?」
「人間相手にこんなことできるか!……いや、デコピンとか位はできるか?なぁ小夜」
「そうですね。でも瑠維さんにデコピンされたら私何処かに飛んでいきそうですね!それはそれで楽しそうです!」
「「「いや、楽しんだらダメだろ」」」
「むしろめっちゃ痛いと思うよそれ」
「そうですか?」
きょとんとした小夜の反応に全員が頷いて。
何処か照れたようにすみません、と小さく謝罪する。
瑠維が席に戻り、そんな小夜の頭をポンポンと慣れた手つきで指先で撫でて食事を再開した。
その間にも小夜は周りの男たちから気さくに話しかけられ、楽しそうに会話を続ける。
「そういえば、タケルさんとマモルさんは双子なんですよね?」
「そうそう!」
「荒漉は兄弟っているわけ?」
「いないんで一人っ子です。にぎやかで羨ましいですね!」
「瑠維にも可愛い妹が一人いるよ~。いつも満面の笑顔でニコニコしてて、抜けてるけど」
「それは褒めてるのか?けなしてるのか?ん?」
「褒め言葉です!間違いなく!!」
「瑠維さん妹さんがいらっしゃったんですね!今度お会いしてみたいです!」
「……まぁ、害はないから良いと思うが……まぁ、何時かな?」
「はい!……?」
小夜が座っているところが急に影になり、小夜が後ろを振り向く。
そこには、始めてみる巨人の女学生が一人立っていた。大学には無い制服を着ている。
「なぁ、今日ってオープンキャンパスだったか?」
「あぁ、そういえば……」
「じゃぁアレ高校生か。道迷ったかな」
クルスたちがぼそぼそと声を潜めて話し合い、瑠維は女学生をチラリと横目で見つつ食事を続ける。
小夜が瑠維を見上げてから視線に沿って女学生をまた見上げ、首を傾げた。
「えっと……こんにちはです」
「……」
小夜が挨拶をしても、女学生は視線は小夜に向けたままで言葉を返そうとはしない。
奇妙な沈黙が続いて、共に食事をしていた面々が瑠維を見る。
「噂……本当だったんだ……人間を手なずけてる人がいるって」
ポツリと呟かれた耳慣れない声。その内容に小夜を含めて全員が固まった。
瑠維の瞳が剣呑になる。
女学生は顔を少し興奮しだしたように赤らめて、瑠維を見つめる。
瑠維はすでに女学生から視線を外して飲み物を啜っていた。
「あ、あの、えっと、先輩でいいのかな……
この子持ち上げてもいいですか!?」
「え?え??」
この子、と指差された小夜が唖然として混乱し、言葉を漏らして瑠維を、周りの面々を見上げる。
瑠維以外の面々は顔を驚愕とも呆れともつかない微妙な顔で、それでもぐうの音も喉から出せず。
女学生が耐え切れなくなったか無遠慮にズイッと小夜に手を伸ばした瞬間、驚いた小夜は思わず立ち上がり自分と同じほどの手指が迫ってくるのに始めて恐怖を覚えて顔を青くした。
悲鳴が喉からでかかった瞬間に。その巨大な手が動きを止めて。
「目上に失礼なことをよくまぁ堂々とできるな?こんな礼儀知らずを見たのは初めてだぞ俺は」
ガシッと勢いよく、小夜にはギリギリという音まで聞こえるほど力強く瑠維がその腕を握りこんで止めていた。
へたりと小夜が腰をトレイに落とし、女学生の動きに立ち上がりかけていた三人はハッとその姿を見つめて。
「あ……あっ荒漉!こっちに来い!」
「小夜ちゃん、怖がらないで今はタケルの手にいこう。そのほうが安全だよ……俺かマモルの手でもいいから」
ズイッとまた横から伸ばされたタケルの手にビクッと小夜が身体を震わせるものの、クルスが後ろから言葉を投げれば、落ち着こうと深呼吸を繰り返した後に小夜は頷いて。
先ほどの女学生のよりも大きなタケルの手指に震える手をかけては倒れこむようにその上に乗り上げて。
タケルは慎重に小夜を自分の下に引き寄せた。
瑠維がそれを見て息をつくと、痛いと訴える女学生の腕を離す。
夏なのでみんな半袖。よって女学生の腕には瑠維に掴まれた後が赤々と残っていた。
「な、なにするんですか?!暴力です!」
「暴力?お前がそれを口にするか?!」
椅子から立ち上がり女学生を見下ろす瑠維。
身長は自分の妹と同じくらいだが、性格は明らかに違いすぎる。思慮の無いガキ。
嫌悪を覚えて頭を数度振り、小夜を見つめた。
「小夜。怪我は無いか?」
「……瑠維、さ……っ」
「瑠維、ヤベェ。ちょっと恐慌状態だ」
「怪我は無いみたいだけど、ろれつが回ってない……」
タケルとマモルが声を上げて、周りの学生たちも騒ぎに気づいてざわついている。
「な、なんでそんな怒るんですか……?
人間を抱っこしようとしただけじゃないですか……!」
「おいガキ……人間はな、確かに俺たちより小さいぞ。だがな、俺たちより小さいからといって……!
俺たちが好き勝手扱って良い小動物じゃないんだぞ!!分かるか!?」
瑠維の怒声。
人間からすればすごい声量に、小夜が耳を押さえる。
タケルがあわてて小夜の身体を全て覆うように両手で包み隠し、音のダメージを減らそうと努めていた。
「で、でも……!」
「でも?なんだ?テレビで好き勝手扱ってたりするものを多く見るか?
ああいうのは大抵打ち合わせされてわざとやられていることだ!俺たちの一挙一動がどれだけ人間に脅威か……!
そんなことも理解できないガキがこの大学に来るな!人間は玩具じゃない――」
「瑠維、もうそれくらいにしとけよ。小夜ちゃんの耳が悪くなる。鼓膜をお前が破る気?」
後ろからクルスに肩を叩かれ、言葉を遮られた瑠維は耳元で言われた言葉にハッとしてタケルの手を見つめる。
開かれた手の上。小夜が耳を押さえて此方を伺っていた。
身体の向きを変え、小夜に手を伸ばす。
僅かに震えられたものの、指先を受け入れて大人しく撫でられてくれるその姿に安堵した。
そこでやってきた教員に事の顛末を周りで見ていた学生たちが伝えて。
教員が小夜の様子を覗きに来た。
「彼女は大丈夫ですか?怪我は!?」
「大丈夫です。少し恐慌状態にはなってますけど……」
「そう。怪我が無いならよかった……とりあえずは保健室へ先に連れて行きなさい。君たち次の学科は?」
「四人とももう今日は終わってます。食事をした後に帰ろうかと……
人間の荒漉さんは今日お休みで、瑠維に会いに来て……今日、コイツに俺たち彼女紹介されたばかりで」
「……わかったわ。災難だったわね……荒漉さんも、怖い思いをさせて申し訳なかったわ。せっかくの休日なのに。
引き止めてごめんなさい。彼女を保健室に連れて行くように。私はこの子を学校に連絡して引取りに来てもらうわ。
そこの体験入学生!謝りなさい!
人間の彼女もこの共同大学の生徒で君の先輩なの!それを動物のように扱おうとするなんて……!謝りなさい!」
教員が女学生の腕を掴み、謝るように促す。
女学生は目を見開いて、やっと始めの瑠維の言葉を理解したように視線を泳がせて。
言葉が出ないのか、唇が閉じたり開いたりするだけ。
瑠維はそれに肩をすくめて、小夜をタケルの手から掬い上げると別の出入り口から外へと出て行く。
他の三人も教員にもういいです、と声を投げてから瑠維の後を追いかけるのだった……
「小夜。怖い思いをしたな。大丈夫か?」
「……っ、は、い……なんとか……すみません」
「無理に喋んないほうがいいよー?恐慌起こしたせいで全体の筋肉緊張して、動きにくいんでしょ?」
保健室。
巨人用と人間用と別れているが、緊急時を考えて人間用のベッドは巨人用の保健室にも置かれている。
カーテンで仕切られた一つのベッドのスペース。
そこに、小夜を含めて五人が集まりベッド横の棚に置かれるベッドに寝る小夜を見舞っていた。
「にしても瑠維かっこよかったな!人間に興味が無かった頃とは大違い!」
「うるさい」
「でもあの女学生何考えてたんだろーな。人間手なずけるとか……ゾッとする」
マモルが心配そうに小夜を見つめながら、先ほどの女学生を思い出して身体を震わせた。
「……一つ心当たりあるよ。この大学さ、巨人のほうが比率多いんだよ。生徒も教師も。
だからさ、この大学の中だったら好き勝手人間を扱えるとか……変なことネットで言いふらしてる奴もいるみたいで」
「うげっ」
「人権て言葉はどこに消えたんだよっ」
「それがさ、その……発端は瑠維と小夜ちゃんみたいだよ」
「……は?何でそこで俺の名とコイツの名前が挙がる?」
クルスの情報に双子が気持ち悪いと声をあげ、更にクルスが放った言葉に瑠維がはじかれたように顔をそちらに向けた。
クルスは言い難そうに頭を掻いていたが、やがてベッド脇の丸椅子に座りなおして。
「巨人の男の学生が、人間の女の学生をよく摘み上げたりしてる、とか書かれてるところがあって……
それから本格的に火がついちゃったらしいんだ。だって異性なわけだし。恋人とはまず考えないし。サイズ差的にね。
今のところ、人間の学生を異性の巨人の学生が摘み上げたりしてるところは俺……まだ瑠維しか見たこと無い」
「……なるほどな。最近は顔を見合わせれば暗黙の了解ですぐ同じ目線に連れて行くから……それでか」
「ある意味……私の、自業自得、ですね」
「いや、お前じゃなくて俺に責任がある……悪かったな。小夜」
ポンポンと指先で寝転がる小夜の身体を撫でる。
「お前の家の番号教えろ。俺が掛ける。
今日は俺の家に泊まれ」
「え?」
「人間の客は初めてだが、まぁ来るものは拒まない家族だ。
そんな状態で帰って心配掛けたくないだろ?ただでさえお前、今日は稽古サボってるんだからな」
「あ。そうでした……」
「喉は復活してきたな。よしよし。
というわけで、番号」
「なんか本当に恋人みたいだねこの二人」
「噂どおりになるってか?」
「お似合いだから俺はいいと思うよ?タケル」
「外野は黙れ」
保健室でそんな会話をしつつ、小夜の家に瑠維が連絡を入れて外泊を何とか許可してもらい。
ベッドから起き上がれるように回復するまでは全員で残り、回復した小夜はまたすぐ瑠維に抱えられポケットに滑り落とされ。
そのまま帰路について、その日は瑠維の家族に迎えられてその家に泊まり、翌日人間の町の入り口まで送ってもらい。
迎えに来ていたらしい厳格そうな父親とほんわかした雰囲気の母親に叱られる小夜を見下ろしていた瑠維まで叱られ。
またいつものような生活が戻ってきていた。
「瑠維さん。今度父が知り合いの巨人が他にいないので、モニターになってほしいそうなんですが……」
「モニター?何を作る気だ?……そういえばお前の親何やってんだ?俺の家はただのサラリーマンだが」
「あぁ、あのですね!私の父は遊戯施設を作っているのですよ。
今は巨人と人間が一緒に楽しめる遊戯施設を作ろうとしてましてですね?
なんだかバーチャル空間にどうとか言ってましたけど……人間のモニターは私と母です」
「バーチャル空間?仮想空間か……ほお。あんな厳格そうな顔で遊戯施設開発者か。なかなか、珍妙だな」
「あは、よくヤクザと間違えられるんですけどねー」
「いや……笑って言うなよそれ……お前も言うな?結構」
いつものように大学内で瑠維と小夜が共に食事を取る。
いつものようななんとも無いくだらない会話。
小夜の暢気に笑いながらの辛辣な言葉に瑠維が楽しそうに笑った後で、
「あ。そうですそうです。瑠維さん、父じゃなくて私の話になるんですけど」
不意に唐突に。
小夜が自分の両手を胸の前で合わせて声を上げる。
「なんだ?」
「あのですねぇ。人間の知り合いよりも瑠維さんと話しているほうが私楽しいと思ってまして。
瑠維さんの手に摘み上げられたりするのも、何でか少し嬉しかったり思ってまして。
常日頃気がついたら瑠維さんのこと考えている自分がいるんです」
「……は?」
「それで、この間タケルさんにも手に乗せていただきましたけど……あの時はそんなになんとも思いませんでしたし……
ですから、母親に相談してみたのですよ。
そうして言われた答えに、私すっきり納得してしまいました。ちょっと変わってると思うんですけど」
「納得したならいいんじゃないのか?なんだ?変わってるって。俺が変とでも?」
「いえ、瑠維さんじゃなくて私が変なんです」
「……保健室行くか?」
「体調不良ではないですよ?」
「……要領を得ん。はっきりといえ。苛立ったらお前をおいていく可能性があるぞ?」
ややムッとしてきた瑠維の顔に、小夜はあらあらと困ったように笑って。
「それは困りますね?」
「ならさっさと言え」
「えっと……あのですね、瑠維さん」
「あぁ」
「私、貴方を愛してしまっているようです」
小夜の言った言葉が理解できず、瑠維が固まった。
頬杖をついて小夜を見下ろしている状態のまま、固まって。
小夜はニコニコと微笑んだまま、瑠維の無造作にテーブルに置かれている手に近寄ってその指の背を撫でて彼を見上げる。
「人間が、巨人の異性を好いてしまいました。
私は貴方が大好きです。困るでしょうけど」
困ったように苦笑する小夜。
内容を理解してきた瑠維が、顔を朱に染めていく。
気がつけば、小夜はすでにほんのりと恥ずかしそうに頬を染めていた。
気まぐれで助け、助けられ。
なんとなく気に入って、気に入られ。
気がつけばいつも一緒。
それは何故?
自分の数十倍は小さい手に擦られる指の背だけが酷くジンジンと熱を訴えていても瑠維は動けない。
ほんの一部分。微々たる場所を撫でられているだけでこんなにも心地よいと感じてしまうのは。何故か。
あぁなんだ。
瑠維は自分の中で憑き物が落ちたような気分になった。
結局は自分も狂っていた。
小夜よりも先に狂っていた。
小さな身体を、彼女という人間を独占したかった。
自分だけが振り回してもよいと何処か狂った思考を持って。
「瑠維さん、あの、迷惑でしたら……」
「……勝手に決めるな。何が迷惑だ。まったく。お前は本当に変わった人間だ」
小夜が顔を伏せてあげた声に、瑠維が静かに反論して撫でられていた手を動かし、小夜の背に添えて親指の腹でその頭にやわらかく触れる。
その感触に小夜はゆっくりと瑠維を見上げて、紅く恥ずかしそうに顔を染めて視線を外している姿を見て。
「……俺もお前が好きなんだ。きっと。
始めて会った時から、変わったやつだと思って。
二回目会った時は、泣き腫らした顔で笑うお前を見て……きっと落ちてたんだろうな。そのときに。
お前を、独占しようと気づかず動いていた……んだと、思う」
「瑠維、さん?」
「まったく、女から先に言ってくるとは……惚れた男の面目丸潰れにしてくれたな?小夜」
「……フフ、なんかごめんなさいです」
「謝るなバカ。
……さて、なら……」
その背に添えていた手指を丸めて彼女を捕まえ、緩やかに持ち上げると、今までに無いくらいまで顔に近づけた。
頬杖をやめて、そのままの位置で手の平に降ろして周りに見えないようその体を隠すようにまた手を添える。
「瑠維さん?」
「……なぁ小夜。こんなデカブツ相手で本当に後悔しないか?」
「デカブツって……瑠維さんこそ、こんなチビが相手でいいのですか?」
「おいっ……返すな」
「アハハ、すみません……でも、しませんよ?猫を被ったりとか、自分に嘘をつくようなこと……したくないですから」
「……そうか。なら……
俺はお前をきっと離さない。小夜……俺だけのものになってくれ」
「はい……喜んで!
あ、でも」
「でも?」
「瑠維さんも、私だけの人ですからね?」
「……負けた。キスするぞ」
「ふぇ?」
「誓約だ。俺はお前だけの。お前は俺だけの。
地球人だって変わらないだろ?」
「す、スキンシップでするところもありますよ?」
「関係ないな。息止めとけよ」
「んっ」
手の中の小夜を手を動かして口元に寄せ、囁くように呟いてからその顔全体に唇を押しつける。
離すと同時に、ふは、と小さい音が聞こえて瑠維は小夜を見下ろした。
「……裏切ったらどうしてくれようか」
「そんなことしません!瑠維さんこそ裏切ったら私怒りますからね?」
「怒るだけか」
「あ!なんですかその反応は!」
「おーいお二人さーん」
響いた声に瑠維と小夜がそちらを見れば。
クルスとタケルとマモルが何処か楽しそうに此方を見つめている姿が目に入り。
「公衆の面前で臆面もなく告白してんじゃねぇぞ~」
にんまりと意地の悪い笑みを浮かべてタケルが言った発言に、瑠維はすぐに顔を真っ赤にして。
小夜は暫くしてから手の中で口元を押さえて瑠維と同じように真っ赤にしてしまった。
こうして彼らにからかわれだす二人だが、大して今後の問題にはならない。
さて。
「お前の親にどう説明するか」
「そうですねぇ。父は許してくれそうですけど」
「は?」
「母のほうが結構、頑固なんですよね~」
「……」
異種族同士の恋人は成立することができるのか。
それは本人たちのみぞ知る。
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NoTitle
特に一方が圧倒的に優位だと、今回の女学生みたいなのも当然出てくるでしょうね。